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Recovering Minds WATARU

ステップ9

ステップ9:その人達や他の人を傷つけない限り、機会あるたびに、その人達に直接埋め合わせをした ほとんどのアルコール依存症者は、しばらくの期間、お酒を止めた経験を持っていると思います。自力で我慢の断酒をやった人もいれば、病院や施設を使った人もいるでしょう。でも、たいていの場合、なぜかまた酒を飲み始めてしまいます。何故でしょう?


長い間、依存症に翻弄されながら人生を送ってきた人の心の中には「恨み」と「怖れ」と「罪悪感」がコラージュした巨大なモンスターが潜んでいます。このモンスターが目の前に現れると依存症者の気持ちは揺さぶられ、居ても立っても居られなくなり飲んでしまいます。お酒は、このモンスターを「一瞬だけ」消し去ってくれる便利な道具でした。この「一瞬だけ」という所が曲者で、「一瞬」が過ぎ去るとモンスターは、何事もなかったように戻ってきます。「また飲んでしまった!」というこちらの罪悪感を食べて、ひとまわり大きくなって戻って来る事もしばしば起こります。そして、こいつを消し去るために今日も、また酒を飲むのです。


どんなに頑張っても、この怪物を完全に消し去る事はできないでしょう。でも、勇気を出して向き合えば、このモンスターと折り合いを付けながら、酒を使わずに1日を終える事ができるようになります。12ステップはこのモンスターを弱体化し、飼い慣らす飼育法そのものであり、そしてステップ9、つまり「埋め合わせ」という作業は、そのバトルのハイライトと言っても過言ではないでしょう。しかし、その実行は容易ではありません。アルコール依存症を克服するのだという意気込みだけでは、十分な勇気や意志を募りきれない方のほうが多いのではないかと思います。 12ステップをやるときには目の前にあるステップの事だけに集中しろと言われました。実際に埋め合わせをするか、しないかは別にして、とにかく傷つけた人のリストをまず作れと言われました。そしてミーティングに出席し、先行く仲間の話を聞きながら、お酒を飲まない日を1日ずつ積み重ねていると、リストに書き連ねた人々の中で、ふと、埋め合わせをしたい気持ちが芽生えてくる人が出てきました。すると、不思議なことに埋め合わせを実行するチャンスが目の前に訪れるのです。そんなことが何度かありました。これは私自身の経験なので、決して埋め合わせはこうあるべきだと言っているのではありません。実際、「棚卸し」から「埋め合わせ」まで短期間で勢いよくやり遂げて、目覚ましい回復をしたメンバーをたくさん知っています。埋め合わせをしないために、断酒が安定しないと思われるメンバーもいます。AAに繋がってから、実際にステップ9の埋め合わせをするまでにどれくらいかかるかは千差万別なようです。


ビックブックが書かれた1930~40年代頃のAAでは、ステップ9の埋め合わせを始めるまでは、正式なAAメンバーとは認められず、AAミーティングにすら参加させてもらえなかったそうです。まず先行く仲間であるスポンサーの導きでステップ8まで終わらせ、さらに、最初のいくつかの埋め合わせを終えると、新しいAAメンバーとして仲間に紹介され、ミーティングに参加できるようになったとの事です。もし今でもAAがこのルールを維持していたら、自分はAAで回復できただろうかと、時々、考えてしまいます。




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