top of page
HOME > アルコール依存症について知ろう > 第3章 ご家族の方へ > ④ 家族にできること

​第3章 ご家族の方へ

④ 家族にできること

ご家族に色々とお伝えしていると、「尻ぬぐいや世話焼きはやめましょう」「手放しましょう」といったように、「してはいけない」ことばかりになりがちです。依存症者のことは、放っておけばいいのでしょうか?

もちろん、「してはいけないこと」や「することで病気を支えてしまうこと」はたくさんありますが、ご家族ができること、ご家族にしてほしいこともたくさんあります。

ハーツ

1 病気の治療を考える

依存症者本人はなかなか病院に行こうとしません。病院に行けばお酒をやめるように言われるのはわかっていますから、当然です。ご相談のほとんどが、「どうやって本人を病院に連れていけばいいですか?」というものです。

まずはご家族が病気について良く知ることをお勧めしています。

​病気についての医学的知識、対応の仕方を身につけることから始めても遅くはありません。また、家族会などで他のご家族と出会うことも大切です。他のご家族の対応の仕方や体験に耳を傾け、ご自身の感情の吐露をする、それだけでも心が整理され、ご家族の健康や安心が取り戻せるようになっていきます。

全国の精神保健福祉センターや役所では「依存症家族教室」を行っています。もしくは、アルコール専門医療を行っている医療機関の家族教室や、家族相談を利用することもおすすめします。まずはご家族が医療や相談機関につながることで、本人を治療につなげやすくなります。

2 責任を本人に返す

飲んだ結果、なにか困ったことが起きたら、それはできる限り本人に後始末をしてもらうようにしましょう。起きたことの責任は誰にあるのか?と、まず考えるようにしてください。もちろん、命に関わる場合は別です。判断に迷うこともあるでしょう。そんなときは「第3章 ご家族の方へ ③イネイブリングと共依存」の「イネイブリングと共依存の行動をやめるために」を参考にしてください。

3 「病気が言わせている言葉」と「健康な本人の言葉」を聞き分ける

依存症者の口から出る言葉にはこの2種類があります。「病気が言わせている言葉」というのは、「第1章 アルコール依存症ってどんな病気? ④病的な飲み方と行動パターン」のところで説明した、「強化されたアルコール探索行動」によるもので、強迫的な飲酒欲求により、なんとか飲酒をしようとして出てくる言葉です。「健康な本人の言葉」というのは、お酒の影響を受けていない、本来の本人の言葉です。

例えば・・・「俺の金で飲んで何が悪い」「家族にはなんの迷惑もかけてない」「飲んで死ねれば本望だ」

これは「病気が言わせている言葉」ですね。飲んだ理由を並べ立てる、家族のなっていないところを批判する、などもあります。

一方、「健康な本人の言葉」では、「本当はやめたいんだけどやめられない」「もう酒はやめる」「迷惑をかけて苦しい」などと、ポロリとこぼすことがあります。

この2つを聞き分けることができると、家族はとても楽になります。

4 自分の言葉を大切にする

ご家族自身の言葉を大切にしてください。また、態度と心を一致させることも大事です。本当は飲んでほしくないと思っているのにお酒を一緒に飲む、買いに行く、というのはやめましょう。「飲むといろいろなことができなくなってしまうあなたを見ていることはとてもつらい」と言ってもよいのです。

また、脅しで離婚や別居を口に出すこともやめましょう。実行しなければ、どうせ脅しだ、と思われてしまうだけです。実行できることだけを口にすることが大切です。

5 自分自身の生活や楽しみを取り戻す

飲酒の問題が始まってからどのくらい経つでしょうか。その間、ずっとアンテナが依存症者に向けられていたことと思います。いつ飲むか、飲みだしたらまた大変だ、面倒なことになる、後始末をしなければ、と、常に緊張状態で、そうせざるを得なかったのだと思います。

ここでアンテナを自分に向けなおしてみましょう。

今日はどんな気分ですか?なにが食べたいですか?最近あった嬉しかったことはなんですか?

きっとそんなことを考える余裕などない毎日だったかと思います。アンテナをすべて相手に向けて、全力でカバーしてきたのですから。でも今、これまでのことに対する別のやり方を学びました。

​アンテナを元に戻しましょう。これは一人ではなかなか難しく、家族会などで一緒に取り組んでいくことをお勧めします。

​6 子どもに真実を伝える

最後に、お子さんがいるご家庭の場合、ぜひやっていただきたいことです。

​子どもはすべて見て、感じています。小さな子どもは起きていることが理解できないと、すべて自分が原因だと思う傾向があります。その方が理解できて安心だからです。自分が悪い子だからこういうことが起きているのであれば、自分がいい子になればいいのですから。そうではないということをわかってもらうために、以下のことを伝えてみてください。

 

① 依存症者本人と病気をわける

依存症にかかった本人は依存症そのものではありません。インフルエンザになったからといって、その人がインフルエンザウィルスになってしまったわけではありませんよね。その人に「アルコール依存症」というモンスターがとりついている、そんなイメージです。モンスターの絵を描いてみることもおすすめです。これを「外在化」と言いますが、本人と問題をわけて考えること、問題が問題なのであり、本人が問題なのではない、ということを大人もしっかり理解することが大事です。

② どんな病気なのかを子どもの年齢に応じて繰り返し説明する

一度説明したらおしまい、ではなく、繰り返し繰り返し、年齢に応じた言葉で、わかりやすく説明してあげてください。

​ティーンエイジャーになったら、遺伝の要素についても伝えましょう。この病気は遺伝的要素が50~60%です。お子さんがお酒を飲む年齢になったら気をつける必要があることを教えましょう。過度に恐れることはありませんが、糖尿病などと同じことです。

※ 家族援助については「家族を援助するか」で学ぶことができます。

bottom of page