HOME > アルコール依存症について知ろう > 第1章 アルコール依存症ってどんな病気? > ① アルコール依存症の診断基準
第1章 アルコール依存症ってどんな病気?
① アルコール依存症の診断基準
アルコール依存症は精神科の医師が診断基準に基づいて診断します。
日本ではWHO(世界保健機関)が作成したICD-10(アイ・シー・ディー・テン)という「国際疾病分類」というものに従って、診断を下しています。
アルコール依存症(alcohol dependence syndrome)
ICD-10診断ガイドライン
過去1年間に以下の項目のうち3項目以上が同時に1ヶ月以上続いたか、または繰り返し出現した場合
1.飲酒したいという強い欲望あるいは強迫感
2.飲酒の開始、終了、あるいは飲酒量に関して行動をコントロールすることが困難
3.禁酒あるいは減酒したときの離脱症状
4.耐性の証拠
5.飲酒にかわる楽しみや興味を無視し、飲酒せざるをえない時間やその効果からの回復に要する時間が延長
6.明らかに有害な結果が起きているにもかかわらず飲酒
厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」より転載
もう少しわかりやすく説明しましょう。
1.飲酒したいという強い欲望あるいは強迫感
これは「渇望(かつぼう)」と言われるものです。
仕事が終わる前から、終わったらどこで飲もう、何を飲もうとソワソワし始める、飲むことで頭がいっぱいになってしまう、そのような状態です。私たちが砂漠で水を求めるがごとくの欲求の強さとも言われます。
2.飲酒の開始、終了、あるいは飲酒量に関して行動をコントロールすることが困難
「飲みだすととことんまで飲んでしまう」「今日はこれだけ、と決めても守れない」という症状です。「時間」と「量」のコントロールができないということです。最終的には、寝ているか、飲んでいるかのどちらかの状態が続く「連続飲酒」と呼ばれる状態になっていきます。
3.禁酒あるいは減酒したときの離脱症状
長く大量のお酒を飲み続けていた人が、何らかの理由で突然、お酒をやめたり、減らしたりしたときに出現する症状で、禁断症状、離脱症状などと呼ばれます。
よく知られている離脱症状に「手が震える」というものがありますが、「手が震えないから依存症ではない」ということではありません。離脱症状の有無には個人差があります。
他にもこのような離脱症状があります。これらは「身体的離脱症状」と呼ばれるもので、「精神的離脱症状」(イライラ、不安焦燥感など)はもう少し後から出現して、長く続きます。
・発汗
・せん妄(意識障害。夢遊病者のように歩き回ったり、暴力が出たりすることもある)
・けいれん発作(てんかん発作のように突然倒れる)
・幻覚(小さな虫が這いまわるようなものから、サーカスのような大きなものまで様々)
よくあるのが、酔って怪我をしたり、内臓の病気になって入院することになり、入院先でけいれん発作を起こしたり、せん妄の症状が出るというパターンです。また、健康診断があるからと、急に飲酒を控えたところ、発作を起こして倒れて救急車を呼んだという話もよく聞きます。どちらの場合にも、医療機関には普段の飲酒状況をきちんと伝えておくことが必要です。(そしてそこから依存症治療へつなげるチャンスです)
4.耐性の証拠
昔と比べて、お酒の量が増えたり、度数が強いものを好むようになっていませんか?これを「耐性の増大」とも言います。
お酒を長期間飲み続けていると、耐性がつき、同じ酔いの効果を得るために、量を増やしたり度数の強いものが必要になっていきます。
5.飲酒にかわる楽しみや興味を無視し、飲酒せざるをえない時間やその効果からの回復に要する時間が延長
飲酒が中心の生活になっていき、その他のこと、例えば家族との団らん、仕事、趣味、友人との交流などがおろそかになっていきます。
平日は仕事と晩酌、土曜日は金曜日の晩に飲みすぎているため、二日酔いから回復するために1日を費やし、夕方からまた飲み始め、日曜日はまた朝から寝ている、というパターンです。
そのうち、会社も遅刻したり、休んだり、休日に家族と約束したことも果たせず、社会でも家庭でも問題が起こるようになっていきます。(「飲酒中心の生活」)
6.明らかに有害な結果が起きているにもかかわらず飲酒
家族関係が悪化したり、身体的な問題が起きていたり、会社でもまずいことが起こっているにも関わらず、飲酒をやめられない、ということです。これを「負の強化への抵抗」とも言います。通常なら、ある行動(ここでは飲酒)に伴って、なにか良くない結果(ここでは家族関係の悪化)が起きた場合、その行動は修正されていくものですが、そうなりにくいということです。