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第1章 アルコール依存症ってどんな病気?
⑦ 断酒率と再飲酒
断酒率について
「酒のない人生なんて考えられない」
「あの人が飲んでいない姿なんて想像がつかない」
そんな声をよく聞きますが、人生の大半をお酒とともに過ごしてきたのですから、そう思うのはもっともなことでしょう。
では、断酒とはどのくらいの成功率なのでしょうか?
アルコール依存症の入院治療を受けていた人の断酒率のデータがありますが、それによると退院直後から急激に断酒率が下がり(つまり、退院してすぐにまた飲みだす人が続々とあらわれる状態)、退院後、2ヵ月半以内に再飲酒してしまう人は約半分、1年間断酒を継続できた人は3割程度とされています。2年たったところでこれは下げ止まり、2割でほぼ横ばいになります。つまり、2年間やめていると、ある程度、病状も安定するということがわかります。
せっかく入院して治療を受けたのに、1年後にお酒をやめられている人は10人中3人だけなの?!とがっかりされたでしょうか。数字だけ聞くとびっくりしますよね。確かに、それだけ難しい病気である、ということです。ではこの飲んでしまった7人はまた入院して一からやり直さなければならないのでしょうか?これまでの取り組みはまったくの無駄だったということなのでしょうか?
再飲酒について
再飲酒をしたとき、本人は、家族はどのように対応したらよいのでしょうか。
再飲酒については、もちろん、しない方が良いに決まっています。再飲酒をすることで、健康や信用など、失うものがあるからです。しかし、過度に再飲酒を恐れたり、再飲酒したらすべて終わりだ、と考えないことも大事です。再飲酒を症状の一つとしてとらえ、正しく対応することが求められます。(これは再飲酒がつきものだとはじめからあきらめることではありません。再飲酒なく、一度でやめられている人もたくさんいます。)再飲酒を回復のステップにできるように、この経験を生かしていきましょう。
再発のプロセス
引き金
1 ストレス
2 ネガティブな感情
怒り、寂しさ、不安など
3 不快な身体状況
空腹、痛み、疲労など
再発
・引きこもりがちになる
・ミーティングや治療の場から遠ざかる
・誰も助けてくれないという否定的な考え方
・飲酒が問題を解決してくれると思う
・嘘をついたりごまかしたりする
・服薬をやめてしまう
再飲酒
飲み始める
崩壊
・連続飲酒発作
・職場や家庭で責任を果たすことが難しくなる
・希死念慮、精神症状の悪化
再飲酒の前に、再発があります。
再発で気づくことができれば、再飲酒を防ぐことができます。
また、再飲酒してしまったとしても、次の日からまた断酒が始められればよいのです。このとき、自分の再飲酒に至る行動を振り返って、再発のサインに気づくことが重要です。そして、再発の引き金となったものが何であったのか、自分のパターンを知ることが再飲酒防止の第一歩となります。
もう一つ大事なことは、再飲酒したことを誰かに話せる、ということです。主治医、自助グループ、家族・・・誰かに正直に話すことが、再飲酒から崩壊へ進むことを阻止するために必要です。本当は、飲み続けるためには誰にも言わず、秘密にしておくのが一番なのです。「実は飲んでしまった」こう言われたときに、どう聞くか、という姿勢が家族に問われます。「裏切者!」「あんなに約束したのに!」などと責められると思ったら、誰が正直に話をしたいと思うでしょうか。「よく話してくれた」「できることがあれば協力したい」というあたたかな姿勢こそが家族に求められます。
また、回復できることを信じるには、自助グループなどに参加して、回復しているモデルに出会うことも大事です。